伊良部島「佐良浜港」完全ガイド

佐良浜港

カツオの街で味わう本物の漁師町文化

伊良部島に初めて行ったとき、17ENDや渡口の浜に夢中で、佐良浜港なんて「ただの漁港でしょ?」くらいにしか思ってなかったんです。

でも、あるとき道に迷って偶然この港町に迷い込んで、急斜面にカラフルな家々が密集している光景を見たとき、「うわ、ここ何この雰囲気…!」ってなったんですよね。しかもちょうど港では漁船が帰ってきていて、漁師さんたちの活気ある声と、カツオの匂いと、エンジン音が混ざり合って、なんだか映画の中に入り込んだような感覚になりました。

その日のお昼に食べた、朝獲れたばかりのカツオの刺身定食。もう、衝撃的に美味しくて。東京で食べるカツオとは全然違う、プリプリで甘みがあって、臭みなんて微塵もない。「これがカツオの本当の味なんだ」って心から思いました。

伊良部島の隠れた魅力スポット「佐良浜港」について、私が実際に体験したことを交えながら徹底的にお伝えします。「伊良部島 観光」で検索している方にこそ読んでほしい。海だけじゃない、島の本当の文化に触れられる場所です。

佐良浜港って何?まずは基本を押さえよう

佐良浜港は、伊良部島の東部に位置する第2種漁港。沖縄県が管理する本格的な漁港で、カツオ一本釣り漁業の拠点として100年以上の歴史があります。

何がすごいって、沖縄県全体のカツオ漁獲量の8~9割がこの佐良浜港で水揚げされているんです。つまり、沖縄のスーパーで見かけるカツオのほとんどが、ここから来ているってこと。現在も4隻のカツオ船が現役で活躍しています。

かつては宮古島の平良港との間に定期船が運航していて、伊良部島への玄関口だったんですけど、2015年に伊良部大橋が開通してからは、漁港としての機能がメインになりました。

佐良浜港

アクセスと基本情報

住所: 沖縄県宮古島市伊良部佐良浜
駐車場: あり(港周辺に複数箇所、無料)
料金: 港自体は無料見学可能
所要時間: 1~2時間(食事・散策含む)
ベストシーズン: 7~9月(カツオ漁の最盛期)

宮古空港からは車で約25分、伊良部大橋を渡ってから約10分。島の東側なので、17ENDや渡口の浜からは少し離れています。でもだからこそ、観光客も少なめで、リアルな漁師町の雰囲気を味わえるんです。

カツオの街・佐良浜の歴史

佐良浜でカツオ漁が始まったのは1909年(明治42年)。最初は「御幸丸」など2隻の小さな漁船から始まったそうです。

実はこのカツオ一本釣りの技術、鹿児島や高知からやってきたもの。日本のカツオ漁の伝統が、遠く離れた宮古島まで伝わってきたんですね。

池間民族の誇り

佐良浜の人々のルーツは池間島にあります。1720年、池間島の人口が増えすぎて食糧不足になり、分村として佐良浜が作られました。この話、前回書いたサバウツガーの記事でも触れたんですけど、本当に深い歴史なんです。

池間島から海を渡ってきた人々は、「誇り高き血脈を自負する海洋民族」と呼ばれています。かっこいいですよね。実際、彼らの海に対する情熱と技術は本物。日本で初めて人工浮き漁礁(パヤオ)を設置したのも、1982年に佐良浜の漁師たちでした。

カツオ漁の全盛期

1930年代から戦前までは、カツオ漁の黄金期。「親子二代で南方漁業に出向けば1年で御殿が建つ」と言われていたそうです。

佐良浜の漁師たちは、パラオ、サイパン、パプア・ニューギニア、ソロモン、ボルネオまで、カツオの群れを追って遠洋に出ていました。想像しただけで鳥肌が立ちます。小さな島の漁師たちが、そんな遠くまで。

男たちが海に出ている間、島を守ったのは女たち。今でも佐良浜には9箇所もの拝所があって、航海の無事と大漁を祈る文化が色濃く残っています。周囲2kmほどの小さな集落に9箇所って、どれだけ信仰心が強いか分かりますよね。

「いんしゃの駅・佐良浜」で新鮮な海の幸を堪能

2018年に完成した「いんしゃの駅・佐良浜」(正式名称:宮古島市海業支援施設)は、佐良浜港のハイライトです。「いんしゃ」というのは沖縄方言で「海人(うみんちゅ)」、つまり漁師さんのこと。

この施設には、食堂、直売所、加工室、体験室が揃っています。私が何度も足を運んでいるのは、ここの食堂と直売所。本当に最高なんです。

いんしゃの駅・佐良浜

おーばんまい食堂で絶品海鮮丼

漁協直営の「おーばんまい食堂」。ここの海鮮丼、マジで一度食べてほしい。

初めて訪れたときに注文した海鮮丼には、マグロ、イカ、カツオ、とびっ子、海苔、しそ、海ぶどう、ゴマがたっぷり乗っていて、あおさのお味噌汁付き。値段は確か1,000円くらいだったかな。「安すぎる!」って思いました。

カツオの刺身定食も絶品です。朝獲れたばかりのカツオは、プリプリもっちりの食感で、歯をはじくような弾力。醤油がいらないほど、舌の奥にぐっとくる旨味があります。フライも美味しくて、衣の中で身がプリっと割れる新鮮さ。

ちなみに店員さんが「揚げたての天ぷらです!」って大きな声で教えてくれるのも、なんか港町っぽくていいんですよね。活気がある。

直売所で海産物を買う

直売所では、その日に水揚げされた海産物が販売されています。地元の居酒屋経営者や島民も買いに来る、本物の市場。

私が買ったのはマグロの刺身。1,000円でこのボリューム!?って驚くほど大きな柵が入っていました。ホテルに持ち帰って、コンビニのご飯と一緒に食べたんですけど、これがもう最高のディナーでした。

半生のカツオ節を燻製した「なまり節」や「カツオ味噌」もお土産におすすめ。カツオ味噌は、ご飯に乗せるだけで絶品のおかずになります。東京に帰ってからも、あの味が忘れられなくて、また買いに行きたくなるんですよね。

港の食堂で海鮮丼を食べる女性

なりきり漁師体験

「いんしゃの駅」では、「なりきり漁師体験」という面白いプログラムも実施されています。漁師さんの手ほどきを受けながら、カツオを一本まるまる解体するというワイルドな体験。

私はまだ参加したことがないんですけど(ちょっと怖くて…)、参加した友人の話では「超楽しかった!カツオへの愛情が湧いた」とのこと。解体したカツオはその場で料理してもらって、食べられるそうです。新鮮すぎて感動するレベルらしい。

予約が必要なので、興味がある方は事前に問い合わせてみてください。

漁港の見どころ|活気ある水揚げシーン

港自体も見どころ満載です。ただの漁港じゃなくて、本当に「生きている港」って感じがします。

漁船の帰港を見る

7~9月のカツオ漁の最盛期に訪れるなら、漁船の帰港シーンは必見。大漁旗を掲げて、音楽を鳴らしながら帰ってくる姿は圧巻です。

私が見たときは、1隻で2トン以上、200~300本のカツオを8人で揚げたそうです。船底から淡々と運び出される大量のカツオ。発泡スチロールの箱がどんどん積まれていく様子を見ていると、「あぁ、これが本物の漁師町なんだ」って実感します。

時間帯は日によって違うので、確実に見たいなら港の人に聞いてみるといいかも。午前中や午後早めに帰ってくることが多いみたいです。

海は泳げない

注意点として、佐良浜港は漁港なので海水浴はできません。漁船が行き来していますし、漁業の邪魔になってしまいます。

釣りをしている人はいるので、「何が釣れているんですか?」って声をかけて話を聞くのは楽しいですよ。地元の方は優しくて、色々教えてくれます。

急斜面のカラフルな街並みを歩く

佐良浜港の魅力は、港だけじゃありません。港の背後に広がる集落が、もう本当に独特で素晴らしいんです。

迷路のような路地

急斜面にぎゅうぎゅうに家が立ち並んでいて、車が通れない狭い路地が網の目のように張り巡らされています。まるでヨーロッパの古い街か、あるいは日本の古い港町を思わせる雰囲気。

私、最初に訪れたとき本気で迷子になりました。細い道を進んでいくと、別の細い道に出て、それがまた別の道につながっていて…。でもその「迷う感じ」が楽しいんですよね。

路地を歩いていると、地元のおばあちゃんに会ったりします。「どこから来たの?」って聞かれて、井戸の話や昔の佐良浜の話を聞かせてもらったこともありました。こういう偶然の出会いが、旅を豊かにしてくれます。

カラフルな外壁の秘密

佐良浜の家々は、カラフルに塗られているのが特徴。赤、青、黄色、緑…まるで南米の街みたい。異国情緒たっぷりで、写真映えもします。

この外壁の色、実は漁船の塗装で余ったペンキを使っているという説があるんです。真偽は定かじゃないけど、なんだかロマンがありますよね。実用性から生まれた美しさ。

限られた平地に多くの人が住まなければならなかった歴史が、この独特な街並みを生み出しました。今は観光客にも人気のフォトスポットになっています。

集落散策ツアー「やーがまくーがま」

もっと深く佐良浜を知りたいなら、「やーがまくーがま」という集落散策ツアーがおすすめ。佐良浜出身のガイドさんが、集落の歴史や文化、隠れたスポットを案内してくれます。

料金は1人2,500円(1名の場合は5,000円)で、約90分のツアー。がじゅまるの木の根っこと塀が絡み合った不思議なトンネルとか、拝所とか、自分だけじゃ気づけない場所を教えてもらえます。

前日17時までに電話予約が必要なので、計画的に。

カラフルな街並みを散策する女性

佐良浜ハーリー「オオバンマイ」|カツオが空を飛ぶ日

佐良浜に行くなら、絶対に体験したいのが旧暦5月4日(6月頃)に行われる「佐良浜ハーリー」。特に「オオバンマイ」と呼ばれるイベントは、一度見たら忘れられません。

ハーリーって何?

ハーリーは、サバニと呼ばれる船を漕いで競い合い、豊漁と航海安全を願う伝統行事。約600年前に中国から琉球に伝来し、佐良浜には1887年(明治20年)頃に糸満の漁師から伝えられたそうです。

宮古諸島では最古の歴史を持つ佐良浜ハーリー。島民総出で祝う、佐良浜最大のイベントです。

カツオが空を飛ぶ「オオバンマイ」

そしてハーリーのクライマックスが「オオバンマイ」。漁師たちが漁船から、カツオやマグロのブツ切りを豪快に投げるんです。文字通り、カツオが空を飛びます。

私はまだ実際に見たことがないんですけど(旧暦5月4日って毎年日付が変わるから、タイミングが合わなくて)、映像で見ただけでもヤバいです。軍艦マーチが流れる中、4隻の船から一斉にカツオのブツ切りが空高く放り投げられて、下では地元の人たちが大歓声を上げながら手を伸ばしてキャッチする。

約8分間で2トンのカツオが空を舞うそうです。もう、狂乱のお祭り。

参加する場合の注意

もし参加するなら、汚れても良い服装かビニール合羽が必須。カツオのブツ切りですから、血しぶきが飛びます。それでもみんな、笑顔で楽しんでいるんですよね。

段ボール箱を持って行くと、カツオをキャッチしやすいそうです。ポリ袋もあると便利。地元の人は慣れたもので、片手でキャッチしたり、落ちたものも3秒ルールで素早く拾ったり、もう技術が素晴らしい。

この日に佐良浜にいられたら、人生の思い出に残る体験になること間違いなしです。

佐良浜港周辺のおすすめスポット

佐良浜港を訪れたら、周辺のスポットもぜひ回ってみてください。

サバウツガー(サバ沖井戸)

港から車で5分ほどの場所にある、歴史的な井戸。240年間も佐良浜の人々の生活用水として使われていた場所です。123段の階段を下りる必要がありますが、絶景と歴史を感じられます。

前回の記事で詳しく書いたので、興味がある方はそちらもチェックしてください。

ヤラブロード

佐良浜から下地島空港方面に向かう県道は、「ヤラブロード」と呼ばれています。ヤラブ(テリハボク)の並木道で、昔ながらの伊良部島らしい風景が楽しめます。

ヤラブの木は潮風に強くて、台風対策として植えられてきました。大きな丸い実から搾れる油は、昔は灯りの燃料や薬としても使われていたそうです。

のんびりドライブするのに最高の道。窓を開けて、潮風を感じながら走ると気持ちいいですよ。

牧山展望台・フナウサギバナタ

島内の他の展望スポットも、佐良浜からそう遠くありません。牧山展望台は島で一番高い場所にあって、伊良部大橋や宮古島、池間島まで一望できます。

フナウサギバナタ(船を見送る岬)は老朽化で立ち入り禁止になっていますが、周辺からの眺めは素晴らしいです。

訪れる前に知っておきたい注意点

佐良浜港は観光地というより、現役の漁港。マナーを守って楽しみましょう。

漁業の邪魔をしない

漁船が行き来している時間帯は、邪魔にならないように注意。船の係留場所には近づきすぎないように。写真を撮るときも、作業の邪魔にならない場所から。

水揚げの見学は基本的にOKですが、漁師さんたちは忙しいので、話しかけるタイミングには気をつけましょう。向こうから話しかけてきてくれることもあります。

駐車場について

港周辺には駐車スペースがいくつかありますが、漁業関係者用の場所もあるので、指定された場所に停めること。分からなければ、食堂の人に聞くのが確実です。

平日の昼間は比較的空いていますが、土日や漁船が帰港する時間帯は混雑することもあります。

営業時間と定休日

「いんしゃの駅・佐良浜」の営業時間は、曜日や季節によって変わることがあります。特に海が荒れている日は、漁に出られないため直売所や食堂が休みになることも。

確実に行きたいなら、事前に電話で確認するのがおすすめです。せっかく行ったのにやってなかった…なんて悲しいですからね。

ベストな訪問時間

個人的なおすすめは、お昼頃。食堂で海鮮丼を食べて、直売所を覗いて、集落を散策して、というコースがちょうどいいです。

カツオ漁の最盛期(7~9月)に行くなら、午前中に港の様子を見てから食事、というのも良いかも。ただし真夏は本当に暑いので、水分補給を忘れずに。

漁港で漁船を眺める女性

よくある質問(FAQ)

Q1: 泳げる場所はある?

A: 佐良浜港は漁港なので、海水浴はできません。泳ぎたい場合は、17ENDや渡口の浜、中の島ビーチなど他のビーチへ。

Q2: 子連れでも大丈夫?

A: 港自体は子連れでも問題ありませんが、漁船や作業に注意。集落の路地は狭くて急なので、小さなお子さんは手をつないで。食堂もファミリーフレンドリーです。

Q3: どのくらい時間がかかる?

A: 食事だけなら1時間、集落散策も含めると2時間くらい。じっくり楽しみたいなら3時間は見ておくといいでしょう。

Q4: 雨の日でも楽しめる?

A: 食堂や直売所は屋内なので大丈夫。ただし集落散策は傘を差しても大変なので、晴れた日がおすすめです。

Q5: 英語は通じる?

A: 基本的に日本語のみ。でも食堂のメニューは写真付きなので、指差しで注文できます。地元の人は親切なので、ジェスチャーでコミュニケーション取れますよ。

Q6: 一人でも行ける?

A: もちろん!私も一人で何度も行っています。食堂のカウンター席に座って、地元の常連さんと話すのも楽しいです。

Q7: クレジットカードは使える?

A: 「いんしゃの駅」では使えると思いますが、現金を持って行く方が確実。直売所は現金のみの場合もあります。

Q8: お土産は何がおすすめ?

A: なまり節、カツオ味噌、新鮮な魚介類。常温保存できるものを選べば、東京まで持ち帰れます。

Q9: 佐良浜ハーリーはいつ?

A: 旧暦5月4日なので、毎年日付が変わります。だいたい6月頃。詳しい日程は、宮古島観光協会のサイトや伊良部漁協に問い合わせを。

Q10: レンタカーは必要?

A: 必須です。佐良浜は伊良部島の東端で、バスもタクシーも少ない。自由に動けるレンタカーがないと不便です。

佐良浜港が教えてくれたこと

観光地って、どうしても「映える」場所に目が行きがちですよね。綺麗なビーチ、絶景の展望台、おしゃれなカフェ。それも素敵だし、私も大好き。

でも佐良浜港みたいな場所は、違う種類の魅力があるんです。

ここには「本物の生活」があります。100年以上続くカツオ漁の伝統。急斜面に寄り添うように建てられた家々。漁師さんたちの逞しい姿。女たちが守ってきた信仰の文化。

インスタ映えはしないかもしれない。でも、ここでしか味わえない空気があります。

朝獲れのカツオを食べながら、港の喧騒を聞いて、迷路のような路地を歩く。地元のおばあちゃんと話して、昔の話を聞く。そういう「何気ない瞬間」が、実は一番記憶に残るんですよね。

私が伊良部島で一番好きな場所を聞かれたら、正直迷います。17ENDの絶景も捨てがたいし、渡口の浜の美しさも格別。でも、「一番印象に残っている場所は?」と聞かれたら、間違いなく佐良浜港って答えます。

ここで食べたカツオの味。港で見た漁師さんたちの姿。路地で会ったおばあちゃんの笑顔。カラフルな家々の並び。全部が、今でも鮮明に思い出せます。

伊良部島を訪れるなら、ぜひ一度、佐良浜港に足を運んでみてください。ビーチもいいけど、こういう「人の営みが感じられる場所」に触れると、旅がもっと深くなります。

カツオの街、佐良浜。そこには確かに、島の魂が息づいています。


施設情報まとめ

項目詳細
名称佐良浜港(佐良浜漁港)
住所沖縄県宮古島市伊良部佐良浜
アクセス宮古空港から車で約25分、伊良部大橋から約10分
駐車場あり(無料・複数箇所)
料金港見学は無料、食事は別途
所要時間1~2時間(食事・散策含む)
おすすめ時期7~9月(カツオ漁最盛期)
海水浴不可(漁港のため)

いんしゃの駅・佐良浜

  • 食堂:おーばんまい食堂
  • 直売所:毎日水揚げされた海産物
  • 体験:なりきり漁師体験(要予約)

伊良部島での忘れられない思い出作りに、佐良浜港を訪れてみませんか。きっと、あなたの「好きな場所リスト」に加わるはずです。