あの藍色が怖いのに美しい理由
初めて通り池を見た瞬間、足が固まった。
濃い藍色というか、ネイビーブルーというか。とにかく深い深い青で、底が全く見えない。「池」って聞いてたから、なんとなくもっと可愛らしいイメージを勝手に持ってたんだけど、全然違った。目の前に広がったのは、「吸い込まれそう」っていう言葉がぴったりの、神秘的で、ちょっと怖い水面。

美しいとは思う。間違いなく美しい。でも同時に、なんだろう、この恐怖感。
池の縁まで近づいて覗き込むと、心臓がドキッとする。水深45メートルって聞いてたけど、こんなに深いのか。しかも、この池、地下で海とつながってるって。え、マジで?ってなった。
で、さらに言うと、駐車場から池まで歩く遊歩道が暑い。日陰がほとんどなくて、真夏の照り返しで死にそうになった。水を持ってきてなくて、本気で後悔した。
今回は、そんな通り池の魅力と怖さ、そして実際に行ってわかった注意点を全部書いていく。下地島を訪れるなら、絶対に外せないスポットだから。
通り池とは?国の名勝に指定された神秘の池
通り池は、下地島の西海岸にある大小2つの円形の池。
厳密には下地島だけど、伊良部島観光とセットで回るのが一般的。伊良部大橋を渡って、下地島へ。17ENDや中の島ビーチと一緒に、1日で周れる。
この池、ただの池じゃない。2006年7月28日に国の名勝および天然記念物に指定されてる。名勝と天然記念物の二重指定って、33年ぶりだったらしい。それぐらい貴重な場所ってこと。
2つの池の大きさと深さ
海側の大きい池(一の池):
- 直径:約75メートル
- 水深:約45メートル
陸側の小さい池(二の池):
- 直径:約55メートル
- 水深:約25メートル
この2つの池、地上から見ると別々に見えるんだけど、地下でつながってる。しかも、海側の池は地下洞窟を通って外の海ともつながってる。だから「通り池」って名前なんだって。
初めて知った時、すごく驚いた。だって、見た目は完全に独立した池なのに、水面下では全部つながってるって。自然ってすごい。
どうやってできたのか
もともとは鍾乳洞だったらしい。
それが、波の浸食で天井部分が崩落して、今の形になった。専門用語で「陥没ドリーネ」っていうカルスト地形の一種。池の周りを見ると、ゴツゴツした琉球石灰岩がそこら中にある。
この石灰岩、ただの岩じゃなくて。よく見ると、岩の隙間からいろんな植物が生えてる。アダンとか、熱帯の植物が、こんな過酷な環境で必死に根を張ってる。その生命力に、なんか感動した。
「吸い込まれそう」なあの藍色の正体
通り池の一番の特徴は、やっぱりあの色。
濃い藍色。ネイビーブルー。深い深い青。
普通のビーチの青とは全然違う。エメラルドグリーンでもない。もっと暗くて、深くて、底知れない感じの青。初めて見た時、正直ちょっと怖かった。
なんでこんな色なのか
この色の秘密は、水深と水温、それから塩分濃度にある。
通り池は海とつながってるから、海水が入ってきてる。でも、池の上の方には雨水も溜まってる。だから、水深によって塩分濃度が全然違う。
- 上層:塩分濃度が低い(雨水が多い)→ 淡い緑色
- 中層:境界線(サーモクライン、ケモクライン)→ ゆらゆら揺れてる
- 下層:塩分濃度が高い(海水)→ 濃い青色
ダイバーがよく言う「ゆらゆら帯」っていうのが、この境界線。淡水と海水の境目で、水がゆらゆら揺れて見える。幻想的だけど、やっぱり怖い。
潮の満ち引きで水位が変わる
海とつながってるから、潮の満ち引きで池の水位も変わる。
満潮の時は水位が高くなって、干潮の時は下がる。池なのに潮位の影響を受けるって、不思議じゃない?でもそれが、この池が生きてる証拠なんだと思う。

私が行った時は、ちょうど満潮に近い時間帯で、水面がすごく穏やか。風もなくて、鏡みたいに空が映り込んでた。その静けさがまた、なんか不気味で。
駐車場から池までの遊歩道が予想外に暑い
通り池に行くまでの道のりで、一番きつかったのが遊歩道。
駐車場から池まで、約300メートル。大した距離じゃないと思うでしょ?でも、これが意外ときつい。

なぜきついのか
理由は3つ。
1. 日陰がほとんどない
遊歩道はアダンの木が生い茂ってるんだけど、完全に覆われてるわけじゃない。木と木の間から容赦なく太陽が照りつけてくる。真夏の昼間とか、マジで地獄。
2. 照り返しがキツイ
木道(遊歩道)が明るい色で、太陽の光を反射する。下からの照り返しと上からの直射日光で、サンドイッチ状態。サングラスと帽子は必須。
3. 風がない
木が生い茂ってるから、風が通らない。蒸し暑い。息苦しい。
私が行った時、真夏の午後2時ごろで、気温は32度ぐらい。水を持ってきてなくて、本気で後悔した。途中で引き返そうかと思ったぐらい。

持っていくべきもの
通り池に行くなら、以下を忘れずに:
- 水(500ml以上):これがないと死ぬ。マジで。
- 帽子:日除け必須。
- サングラス:照り返しで目が痛くなる。
- 虫除けスプレー:夕方とか、蚊が出る。
- 日焼け止め:腕とか首とか、焼ける。
駐車場にトイレはあるけど、売店はない。自動販売機もない。事前に準備していかないと詰む。
通り池に伝わる2つの恐ろしい伝説
通り池には、昔から2つの恐ろしい伝説が残ってる。
どちらも、この池の神秘的で不気味な雰囲気を物語ってる。伝説の真偽はともかく、この池を見てると「何かありそう」って思っちゃう。
ユナイタマ(人魚)伝説
昔々、下地島に村があった。
ある漁師が、ユナイタマ(ジュゴン、または人面魚)を釣り上げた。珍しいから、明日の集まりでみんなに見せようと思って、炭火で乾かしてた。
その夜遅く、隣の家の子供が急に泣き出した。何をしても泣き止まない。母親が外に出ると、遠くから声が聞こえてきた。
「ユナイタマよ、ユナイタマよ、なぜ帰ってこないのか」
すると、炭火で乾かされていたユナイタマが答えた。
「私は今、炭火の上で焼かれています。早く迎えに来てください」
母子は恐ろしくなって、急いで伊良部島へ逃げた。翌朝、下地島に大津波が押し寄せ、村は洗い流された。漁師の家と隣の家があった場所には、大きな穴が残された。
それが今の通り池だって。
継子伝説
これはもっと悲しい話。
昔、下地島に住んでいた漁師が、妻に先立たれた。残された子供のために後妻を迎えたんだけど、やがて後妻は自分の子が生まれると、先妻の子(継子)を疎ましく思うようになった。
ある日、夫が漁に出かけると、後妻は2人の子供を通り池に連れ出した。継子の兄を滑りやすいつるつるした岩場に、実子の弟をごつごつした岩場に寝かせた。
夜中、後妻は目を覚まして、つるつるした岩場に寝ていた子を池に突き落とした。そして、残った子を背負って家へ帰った。
背中の子が聞いた。「弟はどうしたの?」
優しい兄は、弟が「岩がごつごつして眠れない」と言うから、場所を代わってあげてたんだ。後妻は、間違って自分の実子を池に落としたことに気づく。
後妻は通り池に戻り、自分も池に飛び込んで命を絶った。
年に一度、この親子を悼むように、池の色が赤く変色するって言われてる。実際は赤潮らしいけど。
伝説が語るもの
どちらの伝説も共通してるのは、「池に落ちたら上がってこれない」ってこと。
実際、池の縁はオーバーハングになってる。一度落ちたら、自力で這い上がるのはほぼ不可能。だから、昔の人は「ここで身投げをしないように」って注意喚起のために、こういう怖い話を作ったんじゃないかって説もある。
私が池の縁に立った時、本当に足がすくんだ。柵とかないから、ちょっと前に出たら落ちそう。あの深い藍色を見てると、吸い込まれそうになる。
ダイビングスポットとしての通り池
通り池は、日本屈指のダイビングスポット。
でも、初心者には絶対おすすめしない。プロでも難易度が高いコースで、スキルと経験がないと危険。
外洋から池へ入るルート
ダイバーは外洋からエントリーして、地下洞窟を通って池の中に入ってくる。
洞窟の中は真っ暗で、ライトがないと何も見えない。水深も深いし、流れもある。浮力調整がちゃんとできないと、岩にぶつかったり、落下したりする。
洞窟を抜けて池の中に入ると、上を見上げると空が見える。そこからゆっくり浮上して、池の水面に顔を出す。

私が池を眺めてた時、ちょうどダイバーが水面に顔を出した。突然、あの深い青の中から人間が現れて、めちゃくちゃびっくりした。ダイバーの人も手を振ってくれて、なんか不思議な光景だった。
通り池ダイビングの難易度
地元のダイビングショップに聞いたら、こう言われた。
「通り池は上級者向けです。スキルと経験がないと、お断りしてます」
必要なスキル:
- 浮力調整がしっかりできる:洞窟内で落下すると危険
- 耳抜きがスムーズにできる:池から戻る時に耳抜きができないと帰れなくなる
- ガイドを見失わない注意力:透明度が低い池の中ではガイドを見失いやすい
- 冷静な判断力:トラブルが起きても冷静に対処できる
ダイビングのライセンスを持ってるからって、誰でも潜れるわけじゃない。それぐらい難易度が高い。
でも、潜れる人にとっては、一生の思い出になるダイビングらしい。ゆらゆら帯(サーモクライン)を見ながら、洞窟を抜けて池に入る体験は、他じゃできない。
琉球石灰岩と植物の生命力がすごい
通り池の周りを歩いてて気づいたのが、植物の生命力。
池の周辺は、ゴツゴツした琉球石灰岩だらけ。こんなところに土なんてほとんどない。なのに、岩の隙間からいろんな植物が生えてる。
アダンの木
遊歩道にたくさん生えてるのが、アダン。
葉っぱがトゲトゲしてて、パイナップルみたいな実をつける。熱帯の植物で、沖縄ではよく見かける。でも、通り池のアダンは、なんかたくましい。
岩の隙間にしがみつくように根を張ってる。土がないのに、どうやって育ってるんだろうって不思議に思った。
その他の植物
アダン以外にも、いろんな植物が生えてる。
- モンパノキ:海岸沿いによく生える木
- グンバイヒルガオ:砂浜に咲く花
- ハマゴウ:紫色の小さい花
どれも、過酷な環境で生きてる。強い日差し、塩分を含んだ風、岩だらけの土地。それでも、必死に生きてる。
通り池を見に来る人は、池ばっかり見がちなんだけど、周りの植物にも注目してほしい。自然の強さを感じられる。
通り池を最高に楽しむ7つのコツ
実際に行ってわかった、通り池を楽しむためのコツをまとめておく。
① 午前中か夕方に行く
真昼は暑すぎる。
遊歩道に日陰がほとんどないから、昼間に行くと死ぬ。おすすめは午前中(9時~11時)か、夕方(16時以降)。
夕方は特に、池の色が柔らかくなって綺麗。太陽の角度で、水面の色が変わる。
② 水を持っていく
これは絶対。
駐車場に自動販売機がないから、事前に準備していく。500mlのペットボトル1本は最低でも持っていこう。
③ 虫除けスプレーを持参する
夕方は蚊が出る。
遊歩道は木が多いから、虫がいる。刺されると痒いし、せっかくの観光が台無しになる。
④ 池の縁に近づきすぎない
柵がないから、気をつけて。
池の縁はオーバーハングになってて、一度落ちたら上がってこれない。写真を撮る時も、ちょっと後ろに下がって。
⑤ 池の周りをゆっくり歩く
急がない。
池の周りには遊歩道があって、いろんな角度から池を見れる。場所によって、池の色が違って見える。ゆっくり歩きながら、自分の好きなアングルを探すのが楽しい。
ただし、池のさらに先にある「鍋底池(ミニ通り池)」への遊歩道は、2016年の台風で壊れて通行止めになってる。無理に行こうとしないように。
⑥ ダイバーに出会えたらラッキー
運が良ければ、池の中からダイバーが顔を出す。
いきなり人間が浮上してくるから、びっくりするけど、それも通り池ならではの体験。手を振ってくれるダイバーもいる。
⑦ 17ENDとセットで回る
通り池だけだと、ちょっと物足りないかも。
下地島空港の北端にある17ENDは、通り池から車で5分ぐらい。白い砂浜と透明な海が広がる絶景スポット。セットで回るのがおすすめ。
よくある質問(FAQ)
通り池で泳げますか?
泳げない。
池の中に入ること自体が禁止されてる。ダイビングは許可されてるけど、それも上級者のみ。普通の観光客は、池の縁から眺めるだけ。
所要時間はどれぐらい?
駐車場に着いてから戻ってくるまで、30分~1時間ぐらい。
遊歩道を往復して、池の周りをゆっくり歩いて、写真を撮って。そんな感じで1時間あれば十分。
駐車場はありますか?
ある。無料。
大型バスも停められるぐらい広い駐車場。観光客が多い時期は混むけど、基本的には停められる。
トイレはありますか?
駐車場にある。
綺麗に整備されてる。ただし、売店や自動販売機はないから、飲み物は事前に準備していこう。
車椅子でも行けますか?
行ける。
遊歩道はバリアフリーになってて、車椅子でも通れる。ただし、池の周りの一部は段差があるから、介助者がいた方が安心。
子供連れでも大丈夫ですか?
大丈夫だけど、注意が必要。
池の縁に柵がないから、小さい子供は目を離さないように。手をつないで、池から離れた場所で見学するのが安全。
ベストシーズンはいつ?
秋から冬(10月~3月)。
この時期は北東風が吹いて、海が穏やかになる。ダイビングもしやすい。逆に、夏(6月~9月)は南風が吹いて、波が高くなる。観光だけなら夏でも問題ないけど、暑さ対策は必須。
通り池は、怖くて美しい
通り池は、一言で言うと「怖くて美しい」場所。
あの濃い藍色は、今でも忘れられない。吸い込まれそうで、でも目が離せない。底が見えないから、何があるかわからない。そんな恐怖と魅力が同居してる。
遊歩道は暑いし、池の縁は柵がないし、伝説は怖いし。でも、それでも行く価値がある。国の名勝に指定されてるだけのことはある。

伊良部島・下地島を訪れるなら、通り池は外せない。
17ENDや中の島ビーチと一緒に回って、下地島の魅力を全部味わってほしい。ただし、水と虫除けスプレーは忘れずに。
通り池の深い藍色を見て、自然の神秘を感じてきてほしい。あの色を見たら、きっと忘れられなくなる。

